デンマークのフォルケホイスコーレ。Den Skandinaviske Design Højskole

昨日アップしたポートフォリオ編の記事。

デンマークのホイスコーレでの授業がポートフォリオセオリー通りだったというのを書きましたが、ちょっと説明不足だなぁと思いました。どんな授業よ?と。

 

私にとってはデンマークの一番思い出深い場所。せっかくなのでシェアしたいと思います。ただ、2012年時の情報なので、最新版は他の日本人学生の方がシェアしているものであったり、学校のwebサイトを参照してください。

学校のWebサイトはこちら。

http://www.designhojskolen.dk/

 

 

コースは4つ。

グラフィック、ファッション、建築、プロダクトデザイン。

それぞれスタジオが分かれています。入学の申し込み時にコースを選択しますが、入学後に変更している子もいました。授業の内容がコースによって全く違うので、分野が違うなと思ったら無理せず相談した方がいいと思います。入学試験はありません。公用語はデンマーク語です。先生方は英語も話せますし、英語だけで乗り切る方もいるようです。ただ私の時はそういう子は居ませんでした。でも不可能じゃないと思います。

 

私はグラフィックコースでした。当時の先生が今でも教えていて、卒業してからも2度日本で会いました。おそらくグラフィックのコースは私がいた時とそんなに変わっていないのではないかと思います。ただ授業で取り扱うテーマはそのセメスターごとに変わります。課題ごとにゲスト講師がくることも多いです。塾のように同じ項目を毎年繰り返さないということです。

 

グラフィックコースの授業

基本的に1週間で1課題の制作スケジュールです。

月曜日 午前中に課題テーマの説明

火曜日 月曜の午後から引き続きアイディア出し、ブレインストーミング

水曜日 この辺りで先生もしくはその課題のゲスト講師と個別ミーティング(相談)

木曜日 制作

金曜日 午後から全員が簡単なプレゼン

土日  お休み

 

これが大まかな流れです。1週間で1作品できていくので、冬セメスターに入れば6月まで半年ほど。ポートフォリオ1冊分に近い量が出来上がります。作業に時間がかかる作品は2週間の設定だったり、逆に瞬発的なものは数日、ということもあります。大学の1次試験前は大学に提出する課題の制作だけを集中してやる時期もありました。簡単にいえばこの課題制作に取り組むための様々なことをそれまでの授業で吸収させるプログラムです。

 

どんな課題をやってきたか

課題テーマをいくつか羅列してみます。

・数値やデーターからの立体作品

・人体についてのリサーチとビジュアル本

・映画雑誌の表紙のデザイン

・オリジナルタイポグラフィの制作

・雑誌のアートディレクション

・イラスト制作

・ヌードデッサン

・抽象的デッサン

・鳥かごのデザイン

・インスタレーション

・ポスター制作

・ピクトグラム

本当はもっと素敵なテーマ名がデンマーク語でついています。ワクワクするような。ただテーマ名だけ並べても?だと思いますので概要を並べました。 テーマは先生がゲスト講師のスケジュールも加味して決定していて、グラフィックコースなので「好きな絵を描く」とか「毎日デッサンをして技術向上」を目指しているわけではありません。テーマごとに条件が設定されています。

 

例えば雑誌のアートディレクションの制作テーマについて。

・クラス全員がくじ引きを引く。引いたクラスメイトについての雑誌を制作する。

・雑誌の裏テーマはゴーストライター。自伝的内容であること。

・雑誌に掲載するインタビュー内容は全員が同じ項目に回答。基本ベースは全員同じ。

・ページ数、サイズ、印刷技術は全員同じ規定で行う。印刷所に入稿して刷る。

・制作期間2週間

ちょっと恥ずかしいですが、これが私のその時の作品の1ページ。f:id:kiikiii:20180226040352p:plain

 

どちらかというとポートフォリオ編でも書きましたがオブザベーショナルプロセス、制作にプロセスを導入する練習に近いかもしれません。観察し、思考し、リサーチしてビジュアル化する。視覚的な個性を自分で育てていく。そういう時間だったかなと思います。クラスは25名程度ですが、作品批評の場もあるので、そういう意味で一人で自宅でやるのとはまた違うと思います。制約があるというのも、グラフィックの勉強においてはとても良い環境でした。週末はそれぞれ自身で決めたテーマの、好きな作品を作ったりもしていて、そういう作品とのコントラストも良かったのだと思います。

 

これを続けていく中がやってくるデンマークの芸大受験課題。ですが今までの課題の流れで取り組めますし、先生や生徒同士での共有もあるので心強いと思います。私はその期間旅行に行っていたので(関係なかったので呑気)実際のところはわかりませんが、旅行から帰ってきたらみんな死んだように疲れ果てていました。笑

 

フォルケホイスコーレは寄宿制です。食住を共にします。そういう生活からも多くのインスピレーションを受けます。さらにDSDではスタジオも設備も24時間使用可。人里離れた場所にあるので、誘惑もなく制作だけの環境です。スタジオを出ればすぐに森。雪の日もよく友達とおしゃべりしながら散歩しました。

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もちろんここから全員が美術・芸術分野の大学へ進学するわけではありません。ここでの生活を通して、趣味でいいなという子もある程度いました。24時間プレ制作ライフを送る中で見えてくることもありますし、フォルケは受験対策の塾ではないので、そいう子ものびのびと生活していました。実際に私がその一人。デンマークでグラフィックを学ぶ、初めての北欧生活を楽しむ。この時は大学受験なんて微塵も考えず。でも24時間制作に浸かる生活はとにかく自分に合っていました。DSDでの生活から、制作を続けることを後に選ぶことになったのだと思います。

 

「生きる学び」のある場所。

日本の受験対策コースのような雰囲気はありません。

フォルケの本来の目的は生涯学習。それを念頭に置けば、ちょうど良いバランスだったなと思います。