3日で9本。Viennaleで映画マラソンスタート。

23時に家にいる!嬉しい。というわけで、先週末の3連休は23時30分スタートの映画を見て、ディスカッションして深夜3時すぎに帰宅という日々でした。さすがに中日には疲れて、つまらない映画はぐーすか…。クラスメイトはまた風邪をぶり返し「このスタディは忙しくて厳しすぎるよ、不健康だ〜」と鼻声でアスピリン飲みながら今日は早々と帰宅していった。かわいそうに…。

 

祝日でも関係ない、授業です。何の授業かは簡単にこちらへ。

 

kiikiii.hatenablog.com

 まだあと数本、見に行きます。でも、せっかくなので、勝手に映画ランキング。もし興味があれば、どこかでぜひ!2018年の新作だけですから!ちなみに今までで一番長いので、とにかく暇だな、しょうがない読んでやるか、くらいな気持ちで続きへどうぞ。それでもあらすじすら書いてないんですが。偉そうな一丁前なことを書いてますが、この1年の成長。ここではこのぐらいのクリティックはスモールトークの域です。いいとか悪いとかの感想からの成長ということで!生暖かく見守っってください。笑

第9位 ADAM&EVELYN

D: Andreas Goldstein

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金曜ロードショー的な映画でした。友達も木曜日の夜にテレビで流れる映画みたいだった、と。こちらでは木曜ロードショーでしょうか…。映像も軽い、コンセプトも軽い、後味も軽い。強いて挙げるなら冒頭10分は映像が美しい、くらいでしょうか。一応時代物というか設定は1989年のベルリンの壁崩壊前の夏です。あまりその辺りの歴史にも詳しくないので、ノーコメントです。上映後に監督への質疑応答がありましたが、あまり興味深い内容ではありませんでした。辛口御免!

 

第8位 Climax

D: Caspar Noe

 

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上映を最後まで見届けない人が多数。上映後に監督へのQ&Aがあろうがおかまいなし。センセーショナルな映像かと言われれば、まぁバイオレンスというかテクノな映画なのですが、それ以上にちょっと腹が立つくらい、ひねりのない映画でした。強いて挙げれば、ファッション好きの人には映像美として楽しめるかもしれないし、フランス社会に生きる人には何か共感があるのかもしれませんが。私はまた観たいとか内容について考えたいとは全く思いませんでした。フリーク向けの映画かも。一緒に見ていた友達は「映画っていうのは社会へ投げかけるものがあるべきだし、それがない、ただのこういうエナジーとは共鳴したいと思えないね!」と酷評でしたが、私も同感です。ドラッグを扱った作品ではありますが、まぁ、経験者の体験が反映されているわけでもない、というのが別の友人の見解です(突っ込みどころ満載ですが、そっとしておいてください。笑)一同深夜に観終わって、憤慨しながら帰宅しました。

 

第7位 Black Mother

D: Khalik Akkah

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コラージュの手法でデジタルとフィルムを繋ぎながら、ポスト コロニアルであったり神秘性であったり、という主題を語っている映画です。正直なところ、いまいちになぜタイトルがBlack Motherでなければならなかったのか腑に落ちない映画でした。確かにクライマックスに向かって、それを主題に持ち上げてはいますが、どうも無理やりそこに結論を見出した感が否めない感じでした。変な話、映画館ではなくギャラリーとかで上映されていたら印象も違ったかもしれません。ジャマイカの文化に詳しければもっと面白いのかもしれませんが、そもそも映像も流れもあまり好みではありません。てへ。

 

第6位 HIGH LIFE

D:Claire Denis

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こちらはSF。宇宙船の中で繰り広げられる話なのですが、冒頭の10分、「HIGH LIFE」のタイトルまでが私の中のベストシーンでした。全体を通してミステリアスな雰囲気を維持することで、この宇宙船の中での孤独感を表現していたのかもしれませんが、どうにもSF映画にSFのテクノロジーを導入しないと90年代の映画みたいで。割と好きな人はいるだろうなぁとは思います。個人的にはここまではミーニングレスな映画という印象です。

 

第5位 SE ROKH

D: Jafar Panahi

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イランの巨匠、現在も映画製作禁止令もとい自宅軟禁状態でありながらの新作です。監督本人も演者として出演してる、今作はロードムービー。冒頭衝撃的なシーンから物語はスタートします。全体を通して描かれるイランの田園風景で起こる静かでユーモアが散りばめられたストーリーは、結局のところ不透明でありながらも、女性への敬意を感じる描写が印象的な映画でした。ランドスケープも綺麗で、笑える映画でした。中東映画が結構好きなので、贔屓目もあるかもしれませんが、好みで5位!

 

第4位 BEO-NING

D: Chang-dong Lee 

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原作は村上春樹の「納屋を焼く」、韓国で映画化された作品です。原作とは随分違うなぁというのが私の印象ですが、主題は韓国の現代社会への警告、ではないかというのが最初の感想です。明らかに撮影時期がそうさせたのか、そうだったのか。物語の流れも緩やかで、かつ混沌とした、それを目的としたような前半部分と、主人公の彼と現代の韓国社会での耐え難い痛みが重なりタイトル通り焼かれる後半部分。監督自身がどういう意図を持っていたのかは読んでいませんが、個人的にはアイロニカルな挑戦的な作品だったと思います。アジア人、とりわけ韓国人のアイデンティティを強烈に批判したような内容でもあり、上映後に友人たちに見解をかなり細かく聞かれてちょっとたじろぎました。正直、ヨーロッパの人が内容を深くキャッチするのは難しいだろうなと思います。アジアの映画でこういう挑戦はあまり多くないので、日本上映でとどう映るか興味があります。

 

第3位 TARDE PARA MORIR JOVEN

D:Dominga Sotomayor Castillo

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call me by your nameと同じプロデューサー、納得な映像美でした。とにかくキャスティングがとても良くて、上映後の監督のQ&Aでも話題に上がっていました。もともとオリジナルは監督自身が幼少期から青年期に過ごした環境で、まさに同じようなビレッジで生活し、そこから今作に俳優として出演している人たちがいます。イントロダクションを読むとヒッピーな話かと勘違いしますが、多感な時期に、干渉も関心もズレた環境で実際の子供達がどう世界と対峙しているのかを情緒たっぷりに描かれています。主人公の女の子が、音楽が、そして光が刹那で美しい映画でした。物語も割とクリアに描かれているので、しっかり見届けられると思います。英題のTOO LATE TO DIE YONG、ピッタリなタイトルでした。映画好きにはちょっとオシャレ感が鼻につくかも。

 

第2位 ALICE T.

D:RADU MUNTEAN

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ルーマニア映画、秀逸でした。英語字幕への翻訳がイマイチだ、と一緒に見たルーマニア人のクラスメイト談。ウクライナとルーマニア間の風刺を字幕に反映しなかったその心はわかりませんが、全体的に読みづらい字幕ではありました。それを踏まえても、ディレクションチームの仕事はブラボー。ティーンエイジャーを扱った映画って極端に悲観的であるか、もしくは最後には希望が垣間見えるか、という安直なラストなど毛頭考えなかった感がかなりのリアリティを持っていました。16歳の主人公のカメレオンのような人格表現は、むしろカメレオン以上。統合性が欠落しているその危うさと大胆さと、そして切なさが、これがティーンエイジャーだろうよ、という感じでした。こちらも上映後に監督のQ&Aコーナーがあったのですが、本人も非常にブラックユーモアな方でした。この製作の動機を「ティーンエイジャーに差し掛かる子供を持つ身としての準備」と冗談たっぷりに回答していました。そして、主人公のアリスを演じたのはこれがデビュー作の少女。監督曰く、瞬発力のある役者で、時に経験が全くない素人を起用することに演出上の大いなるメリットがあることを語っていました。たどたどしさも含めて、バチッとハマったのでしょう。表現が日本ではモザイクものなので、上映される可能性は薄いのが残念です。いい映画でした。

 

第1位 RAY&LIZ


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予告映像がイマイチですが。笑

現在暫定1位、とてもいい映画でした。イギリスの写真家、リチャード・ビリンガムが自身の両親をドキュメントした写真作品「RAY'S A LAUGH」が映画へ展開されたのが今作です。もともと絵画を大学で勉強していたこともあり、シーンの残像がペインティングのように目に焼付く、視覚にかなり訴えてくる映画でした。映像美とはまた違う、映画の、そして彼の人生を翻訳したらこういう映像になった、という感じ。ファンタジックな色合いでも、圧倒的な現実感が押し寄せ、喉が詰まるストーリーでした。構成も非常に感覚的に計算されていて、冒頭10分が最後までテンションを落とさずチェーンされていくような作りでした。突っ込みどころのない、個人的には久々に心に迫る映画だったなぁと思います。写真集もとてもいいので、オススメです。