可能性を探しています。詳しい方を探しています。

ビザの更新申請をしてから早3週間。未だに受取りの手紙が届かず、ドキドキしています。追加書類はメールでいいよ、そしたら手紙が来るからね!の言葉をもしかしたら、何か聞き間違えたかもしれない…ドイツ語だったし…メールが見落とされてるかもしれない…と不安が募る日々。とりあえず、メールで提出した書類を念のため、今日直接イミグレーションへ行き再提出してきました。事情を話したら普通に受け取ってくれたので、もし審査が止まっていたなら進んでくれるといいのですが…11月には研修でスイスに行かないといけないし、1月にはロンドン。ビザが手元にないと、なんだか生きた心地がしません…。

 

大学でも韓国人の友人とビザの話になりました。

彼女は今年入学したので新規での申請。どうも昨年の秋からちらほらと学生ビザの取得がさらに厳しくなっているらしいということを耳にしていました。彼女も例外でない様子。追加書類を提出したのに、また同じ内容の書類を要求されていて、さらに何を求められているのかわからず困惑している。もう直ぐビザなしでの滞在期限も来るので、韓国の大使館や弁護士に相談を始めていて、もう一度MA35に通訳と行ってくる予定だという話をしていました。私の時はそこまで厳しくなかったので、ちょうど境目だったのだろうか…。直接仲のいい友達からそういう話を聞いたのは初めてで、とてもショック。ただ私がショックを受けようが同情しようが、状況は変わらないので、大学のビザ関連のサポートをしてくれる機関の情報を共有し、協力してくれる大学の先生を知っていたのでその人を紹介しました。話を聞く限りは、書類に不備が無い分、何を解決しないといけないのかが不透明です。

 

彼女の不安がわかるので、気づけば二人で相当深刻な顔をしていたんだと思います。

 

私たちの顔を見て、友人が「どうしたの?」と声をかけてきました。ビザの話だよ〜と軽く流そうとしました。すると、座り込んで急に「話聞かせて」と。韓国人の友人と二人で驚いていると、友達のルームメイトの話になりました。

 

彼女はEU市民ですが、ルームメイトはイラクからの難民。オーストリアに来て3年目。その3年で2度、滞在許可でネガティブを受けた、そして今がその2回目で彼は今にもイラクに強制送還間近で困っているという話でした。彼は所定通りのビザの更新手続きを行っていました。ですが、移民局からの連絡不備により、追加書類の提出要求のメールが届かなかった。どうも審査に時間がかかりすぎじゃないかと、調べ出したところ期限の6週間をすぎた7週間目、提出書類が必要だったことが発覚。ですが期限を一度過ぎたものは取り扱えないという問題になり、つい先日裁判所へ行ってきたとのこと。

 

私の友人は英語もドイツ語も堪能で、心配で一緒に裁判所に行ったそうです。もちろん弁護士も通訳も手配していました。

移民局の担当者のコメントは非常に厳しいものでした。

「あなたにメールが届かなかったのは私たちの手違いです。謝罪します。ですが、もう何も出来ません。あなたが合法で滞在できる可能性はありません。…あっ一つだけあります。結婚でもしたらどうですか」

友人は怒りに震えていました。「あの真っ白なシャツに完璧な爪で顔色一つ変えずに言い放ったんだよ。彼がイラクに戻れば国境を越えた瞬間に命が無い可能性が一番高いのを知っているのに。移民局の仕事が大変であろうことは想像できるけど。許せない。悔しい」と。

 

判事は彼がメールを受け取っていないことを全面的に信じてくれましたが、決定を覆すことが出来ずに強制送還の決定が出る間近。彼のガールフレンドはオーストリア人で、彼女は婚姻で今の状況が変わるならそうしたいと言ってくれていますが決定が出る直前で婚姻ビザの申請に切り替えて上手くいくのか、可能性は低いかもしれない…。

 

裁判所で読まれた移民局側の主張は「彼がイラクで警官に執拗につきまとわれ、顔面を強打され傷害を受けた事例は、重大な事態とは言い難い。よってイラクへの帰国が相当」ということでした。

 

「恐怖をどうやって測るのか、身体検査じゃないんだよ。彼が婚姻ビザに切り替えたら今度は愛を測るんだよ。どうやって?正気じゃない。今までEU市民で呑気に生きてきた自分が情けなくて、でも法廷で明るく振る舞い、礼儀正しく謙虚な彼を見ていて、もういいよ!て叫びそうだった。どうしてあんな態度の人に丁寧に対応しないといけないの…」そう話しながら、顔を真っ赤にして泣き出してしまいました。話を聞いていたみんなで「あなたのせいじゃないじゃない」と宥めても「そうかもしれないけど、知らないのは加担していたのと一緒だよ」と。それが彼女が私たちのビザ、という言葉に反応して立ち止まった理由でした。

 

私も韓国人の友人も、最終的には帰る国があります。国境を越えれば、ただ家族が迎えてくれる。彼とは状況は全く異なりますが、彼がその状況でもなお移民局の心証を気にする気持ちは痛いほどわかります。

 

ビザを申請する人にはタイムリミットがあります。どれだけアンフェアなことを言われても、または最悪そんな結果を受けても、国民ではないのでその後裁判のためにその国に滞在し争う人は殆どいないのではないかと思います。自分がそういう目にあったとして、その裁判で数年を棒にふるのか。多額の費用をかけて。そう思うと、移民局と外国人の関係がフラットにならない。どれだけ嫌なことを言われても、戦う気持ちを抑えてしまう。彼のように命がかかっているなら尚更です。心が痛くなります。

 

友人たちで、何か出来ないか。「倒れている人の話だけを聞いてあげても、助けにならない。手を掴んでその人が立ち上がるまでしたい」私をいつも助けてくれる友人の言葉です。私も昨日から、何かそういう事例をたくさん扱っている機関はないのか調べています。もし、何かご存知の方がいらっしゃったら教えていただきたいです。

 

私の昔の彼はシリアからの難民でした。彼は今結婚して、家族を持ち、仕事をして、日々を暮らしています。私は彼との日々で、難民のコミュニティでの生活経験があります。目の前で彼らを見てきた。今は自分の国でなかったとしても、生きていれば将来、帰ることができるかもしれない。アフリカからの難民の友人は少し前に14年ぶりに母国へ入国でき、家族と再会しました。

 

時々、ウィーンは平和ですよ。難民問題は日常生活で感じない、テロの恐怖はない。そんな言葉を目にしますが、私は感じる。他人事じゃない、私の世界の現実です。