天秤にのせるもの。

夏セメスターも残り2週間で授業が終わり、あとは夏休みの宿題(表現ほど可愛くない。笑)がどっさりと残るのみです。提出期限は10月頭。夏休みがなんだか落ち着かないのはこのせいですが、今年こそは一時帰国したい!3週間でいいから!と言う意気込みを散々口にしてきました。そんな私に棚から牡丹餅。でもちょっと栃餅。

 

先週の昼下がり。

主任教授「kiki、来年の私のウィーンでのプロジェクト、インターンに興味ない?」

わたし「えっ!あります!もちろん!いつですか?」

主任教授「来年の10月よ!じゃあ決まりね!」

 

それから3日後。

主任教授よりメールが一通。

リーベ Kiki!早速プロジェクトの最初の演出家とドラマトゥルグとのミーティングに行ってきたから、今週中にインターンとアシスタントを集めて私たちのミーティングをしたいの。8月には本格的に始めるわ〜!

 

なっなんと!一年がかりのプロジェクトですか?えぇそらそうでしょうけども…もちろんやりますとも!一年なんてむしろ短いですよね!楽しみですとも!インターンは必須単位に含まれてるし!えぇ、意気込みバッチリ!!

 

…で、私の一時帰国いつ??

 

この2年、アップダウンを繰り返しながらず〜っと一時帰国のタイミングを逃してきました。長期休みがこんなにあるのに、どうして…ねぇ。いや、自分が悪いんですけど。

 

ただ、裏を返せば、2年でここでの生活が地に足がついたものになったということでもあります。こうやってインターンのお誘いがきたり、アルバイトの打診があったり、課題が山積みだったり、怪我をして病院の長期アポイントがあったり。笑

 

今日も今日とて、友達の悩みを聞いたり。プロジェクトのお手伝いに行ったり。財布を無くした友達を助けに行ったり。(決してオチをつけたいわけじゃいのに、今日のリアルな出来事です)

 

次のセメスターでは仲の良いスタジオの友人が2人卒業予定です。卒業制作の話と並行して、卒業後の進路の相談に乗ってみたりもしています。卒業後にウィーンに残る友達はとても少ないです。それぞれ、自分のプロジェクトやアシスタントを始める都市から都市へ、国から国への移動生活が始まります。教授がそうであるように、一年の大半はプロジェクトのためホームタウンを離れることになります。周期は2ヶ月に1回、ちょっとホームに立ち寄って次の準備。そしてまたすぐ移動。

 

こういうライフスタイルが、私たちの分野ではある種セオリーなのですが、それをそうでない人に、例えばお付き合いしている彼氏_彼女に理解してもらうのは簡単ではありません。今日もそういう相談を聞いていました。結論を急ぐと、夢を諦めるか、パートナーを諦めるかのどちらかに天秤が振り切ってしまうのが怖くて、相手に強く言えない、と。

 

彼女の話を聞いていて、私もそうやって、夢と家族を天秤にのせることを選んで、パートナーを諦めたことを思い出しました。彼にとってもそれで良かったので、後悔はしていませんが、夢ややりたいことを諦められない自分をひどく傲慢に感じたことを覚えています。友達もまさに「私ってわがままなんだろうか。彼を愛していないんだろうか」という自問自答の真っ只中にいます。

 

 

二人で何を共有していて、二人で何を天秤にのせるのかを考えたほうがいい。

私は過去にそうして、結局別れを選んだけれど、そうしたから後悔してない。

それが簡単でないことを理解した上で、時に愛みたいなものと自分の欲求が秤に乗せられているように感じる辛さがある上で、私が言えたのはそのぐらいでした。 

 

と同時に、数日前に見た、ハンガリー人の友達のプロジェクトを思い出しました。ハンガリーの神父一家が仕事の都合で一定周期で引越しを繰り返す、その同伴者である奥さんにフォーカスを当てたリサーチの話を聞きました。調査した夫人の大半が自分のキャリアにも積極的だったという話です。たとえ数年で住む土地が変わろうとも、住んでいる期間はただの同伴者ではなく自分のやりたいことをやっている。

 

夢は持ち続ける限り、もしかしたら場所に関係なく切り開かれるものかもしれないとも思います。速度や規模や風速は変わるけれど、それを起こす自分自身のエンジンが切れなければ。もちろんエンジンの持久力を常に向上させる必要があるけれど。そういう準備ができたら、私もどこか1箇所、誰かの側にいられるのかもしれない。

夢も勉強も、結局死ぬまで続くんだろうから、時々立ち止まることも大切。それが家族のためならなおさら。だから、天秤には家族だけを乗せて、やっぱり今年は一時帰国しよう。そうしよう!時にアンバランスな天秤を許して、今は今で受け入れないとな。

 

彼女の悩みは当分続くけれど、とりあえずkikiの悩みは解決しそうだねぇと笑って別れました。 

 深夜2時、熱帯夜のウィーン。