ウィーン建築。Wotruba Church。

先日、授業でWotruba Churchへ行ってきました。本物が見れるなら現地へ、本人に話が聞けるならスカイプだって繋ぐ、そういう精神により週末返上で授業が開講されています。ただどちらにせよ、このWotruba Churchはいつでも開いているわけではないので土曜日の午後にお邪魔してきました。

 

まずはお写真。今回はちゃんと撮りましたよ!

建築の授業だから堂々とシャッター切れるってもんです。

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写り込んでいるのは、母のように私をお世話してくれる同級生の友人。二十歳なのに驚きの自立心と、ときたまみせる二十歳らしさが可愛い彼女です。

 

さて、メインは建築です。あいにく曇り空で、かつ露出設定を間違えて暗めですみません。個性的な教会です。建築様式でいうと1950年代から70年代のブルータリズム。生のコンクリートの打ち放しですね。Brutalismの授業の一環で見学へ行きました。

 

建築デザインはオーストリアの彫刻家フリッツ・ヴォトルーバ、彼の名前からWotruba Churchと呼ばれています。正式名書はKirche Zur Heiligsten Dreifaltigkeit。1974年に施工開始し、彼が亡くなった1年後の1976年に完成した建築物です。彼の彫刻を見たことがある人なら「そのまま教会じゃん!」が第一声かと思います。私も、そのままじゃんって思いました。どの辺がシャルトル大聖堂からインスパイアされたのか…。

建築のためのスケッチ by Fritz Wotruba, 1966 Bleistift, Tusche 29.7×41.8 cm

 

彼のホームーページでオイディプス王のセットデザインや彫刻作品の写真が見られます。 Werkkatalog Fritz Wotruba

こちらは2011年の21. er Hausでの彼の展覧会時の模様。

www.21erhaus.at

 

神父さんご夫婦に教会内部を案内してもらいました。

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積み上げられたブロックの間から自然光が差して、日中はとても明るいです。

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十字架も建築に合わせたのか、銅のような素材(確認不足)

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ソングブックの表紙にもデザインされるほどのインパクト。

 

神父さんご夫婦のお話によると、デザイン段階で彼のアトリエに模型を見に行くと、スケール無視の彫刻=模型を見せられたそう。とにかく模型製作が遅かったともおっしゃっていました。ただ、教会の立地や理念を汲んだ建築であるとの説明を聞き、インパクト狙いではないと云うことは理解しました。神父さんの教会建築についての見解が明確で「なるほどなぁ〜」と。建築の本には、現在そこで使用者となっている人のコメントは中々載っていないので、生の声は貴重です。ただ彼の作風が全面、金太郎飴のように押し出されてることは言うまでもありませんが。地下は地上とは打って変わって、多目的スペースで温かみのある「普通」の空間でした。クリスチャンではない私の素朴な疑問、先生にも質問したことで「教会建築の定義とは?」が反映された空間でした。

 

解放日が限られているので、私たち以外にも建築ツアーの団体や学生を見かけました。ちょうど今、MQでSOS Brutalismの展覧会が開催中で、その一環でツアーも開催されています。

www.azw.at

この展覧会も面白かったです。読み物が大半を占めているので2時間以上居座り、閉館時間になり、優しく追い出されました。

 

クリスチャンが多い(おそらく私以外全員かも…)クラスの子達からクリスチャンカルチャーを教えてもらうことも多いです。倫理や宗教学で宗教、キリスト教全般の知識はあるものの、実生活とは遠かったので興味深いです。街中で小さい女の子が白いドレスを着て歩いていたら、あれは「初聖体」へ行くのよと教えてもらったり。この日も「初聖体」の儀礼後でした。白いシンプルなリネンのシャツを着て正装した主役の男の子、同じくドレスアップした親戚家族一同。儀礼が終わるのを外で待っていたのですが、コンクリートに反響する聖歌と森のざわざわとした音は混ざるととても耳触りがよく、立地との相性を感じました。

 

教会のある丘の上には観測台もあり、中心地から少し離れているのでとても静かです。私はこの丘の上に教会だけがある、今の風景が好きですが、現在近代建築を増設中です。この景色ももう直ぐ見納めかもしれません。アクセスや開放時間は教会のホームページでご確認ください。Georgenberg | Wotrubakirche - Kirche zur Heiligen Dreifaltigkeit

 

見学が終わり帰る頃、神父さんに「どこから来たの?」と聞かれ日本からですと答えると嬉しそうに「でもドイツ語がわかるんだね」と話しかけられました。全部はわかりまんが…と答えても、とびっきりの笑顔で「頑張ってね」と。帰りがけに先生がコーヒーをご馳走してくれて解散。とてもいい土曜日でした。