安く、たくさん、新しい、の時代はもう終わってもいいと思う。

私をよく知る友人や家族は、kikiは節約と貯金がうまいと言ってくれる。

世間的に高収入な仕事についたことはないけれど(むしろ人生でボーナスを貰える仕事についたこともない)、留学や海外生活などの目的があれば、その都度その中でコツコツと貯金をしてきた。カナダへ行く前の2年半で200万円ちょっと、ボーナスもなく、一人暮らしをしながら貯金できた。別に何も我慢していない。

 

ただ、多分ちょっとした理由はある。

私は「便利なもの」も「安くてたくさん買えるもの」も必要としていない。ものを購入するときは、今持っているものが使えなくなって、また必要になった時だけだし、そもそも海外にスーツケース一つで渡って、生活できるぐらい生活必需品の項目も少ない。そして、ものは簡単には壊れない。

 

だから、スーパーで2つでお得、とかも買わないし、まずストックを持たない。冷蔵庫の中が空にならない限り買い物には行かない。あったら便利かもしれないけれど、無くても生活できているなら、特に購入しようとは思わない。なんでも安く手に入れようとか、そういう気持ちもない。たとえば、今の私は全く裕福な暮らしはしていないけれど、払えるものを、適正価格で手に入れたい、ぐらいだ。普通である。

 

最近、何かのきっかけで見かけたのだけれど。あるyoutuberの人がアパレルをスタートするにあたって、メーカーの人に「そんな値段じゃ誰も買いませんよ」と、とても良いクオリティの生地であることに感動しておいて、値下げ交渉をしていて驚いた。元々非常識な金額ではなかった。付け加えるなら、動画を撮っていたので、半分以上はパフォーマンス的な発言かもしれない。この人を批判しようという気持ちもないけれど、単純に驚いた。

 

その生地、天から降ってきたわけじゃないんだよ。

生産者が時間と労力をかけて「いいものを作ろう」と取り組んだもの。

洋服だって、どっかから湧いてきたわけじゃないんだよ。

それを縫製することを生業としている人がいるんだよ。

 

ブランドが洋服にブランド費を上乗せしなかったら、その洋服作りに携わっている人たちの生活をどうやって支えるのだろうか?経営って儲けるだけじゃなくて、そこで雇用を生むっていう責任も果たしているんじゃないだろうか。経営者の人で、たまに「この人従業員がコストにしか見えないんだな」って場面に出くわすと「雇用を生んでいることに誇りが持てたら、もっと従業員を大事にできるのではないだろうか…」とか切ない気持ちになる。

 

Youtuberの人たちは自分の私生活まで境界なく色々取り組んでいて大変だ、お金が稼げているのは自分の努力の賜物だから、お金は稼いだ人が好きなだけ使いまくればいいと信じてやまない子供が増えていったら、それはそれで怖い。その人のお金だから、何に使おうが、もちろん自由だけれど、それがヒーローになるのは怖い。私は怖い。

 

税収の多くを高所得の人たちが担っていることは事実だけれど、彼らだけが社会を支えているとは言い切れない。俺たちの税金で道路を歩けてるんだ、みたいなことを言っていた金持ちがいたが、あなたの生活を安い賃金で支えている人だってもちろんいる。ただ社会に必要な多くの職業とその所得は見合っていない。そう私は思います。あなたが高額納税できているのは、たまたま今の時代に「お金が稼げる職業」だった、と言う可能性はゼロじゃない。収入が高くなくても、社会を支えている職業が本当に沢山ある。むしろ見直されずに何十年もその市場価値で働いている人がいる。

 

ドイツでベーシックインカムの社会実験が始まった。

www.newsweekjapan.jp

私はドイツ人ではないので、関係なさそうで、でもこれが正となる結果がでたら、世界はずいぶん変わるかもしれない。政府と国民のパワーバランスが歪まなければ。

 

フィルター越しの世界。

mumokに続いて今週は2館お邪魔してきました。もうBundesMussenCardの19ユーロの元は取りました。やっぱり破格のディスカウントだったことは言うまでもない。 

kiikiii.hatenablog.com

 ウィーンに住んで早3年、一度も行ったことがない美術館が2つありました。

一つは、かの有名なアルベルティーナ。

www.albertina.at

日本語のページが存在します。つまりは観光名所として鉄板なのだと思います。なんせ日本人の好きな印象派の作品も多いですしね。アルベルティーナの下にあるフィルムミュージアムには映画を見に行ったり、お隣の公園で日光浴がてらぼーっとしたりすることはあっても、アルベルティーナの階段前が旅行者で混雑している景色を目の当たりにすると「激混みの美術館…」といつも腰が引けて、後回しにしていました。実際どのくらい混雑するものなのか、今は想像できないほど、私が行った時はガラガラでした。

 

そう、ガラガラなのです。どこもかしこも。

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誰もいません。館内もガラガラです。なんだかオーストリアなゴージャスなお部屋も見て周れるのですが(興味がなくてインフォメーションを全く読みませんでした)、こんな写真が簡単に撮れちゃうぐらいガラガラです。

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このオーストリアな感じを突きつけられると、なんでわたしウィーンに居るんだろう?と言う気持ちになるくらいには、このテイストが響くことはないのですが…フランスの煌びやかさとも全然違うし、このザオーストリアテイスト…つっ伝われ!

 

特にお目当があったわけではないのですが、びっくりしたのがVincent van Gogh: Der Sämann, 1888。本やデジタルで見るのと想像以上にぜっんぜん違う!この白をフレッシュに再現できない以上、もはや別物。とても素敵でした。例えるなら、こんな感じ。

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ウィーンで美術館8館、BundesMussenCardをゲットして、ぶらっと見てみる。

すっかり秋模様のウィーン。未だにEU圏外からの旅行が再開されそうな気配はないのですが、観光都市ウィーンは、あれやこれやとディスカウント中です。ちなみにウィーンは只今黄色信号中です。オーストリアは信号制度でコロナ対策を切り替えることになりまして。大阪でも光ってましたが、冬場の二度目のロックダウンを回避すべく分かり易く周知しようじゃないかと…またこれについては別で書けたら書きます!

 

話はそれましたが、まだまだコロナ禍だってことでして。そういえば、mumokの展示がそろそろ終わるな〜見に行かないとなぁ〜と営業時間を確認しようとホームページを読んでいたら、なんだかとってもお得なものを発見。
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こちら、BundesMuseenCardが9月15日まで59ユーロが19ユーロと40ユーロのディスカウント。びっくり。おそらく観光客向けと言いますか、ビジター向けのものだろうと思うのですが、実際の旅行中に美術館8つも周るかしら?って話なのですが。笑。ちなみにアルベルティーナ美術館の館長はこのディスカウントにお怒りでした。でもこれだと新しいモデアーネの方は見れないし、いいじゃない〜って感じですが…。まぁ確かにかなりお得です。19ユーロだったら、2館でもう元は取れちゃいます。なんせmumokで13ユーロ、アルベルティーナで16,5ユーロですから…まぁ、そりゃ怒るかしら…。

*1

 

そんなわけで、mumokのチケット売り場でこのカードを購入して、まずはmumockを鑑賞してきました。ちなみにチケットを買う時に名前がわかる身分証明書の提示を求められます。カードに白部分があるのは、私の名前が入っているので隠しました。まだ2館目に行ってないのですが、想像するに、都度身分証とセットで使う感じなんじゃないかと思います。使い回し防止、転売防止でしょうかね?


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お目当は、mumokコレクションを展示していたIm Raum die Zeit lesen Moderne im Mumok 1919 bis 1955。9月6日までだったので滑り込みでした。

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本で見たあれが、目の前に〜Juhu!と言う感じでウキウキ。レプリカで見たことがある作品もありましたが、やっぱり全然違うよ。筆のノリが違う。厚みが違う。

 

そして1月6日までやっているMisfitting Togetherもすごくよかった。むしろこっちの方がよかったかもしれない。コレクションはなんていうかオールスター戦的な良さはありますが、やっぱりキュレーションがうまく機能している展示を見るのも好きです。

 

Claes Oldenburgのmouse museumもRay Gun Wingはいい意味で裏切られて、私の知っているオールデンバーグが一新されました。そもそも近年の作品と作品集のイメージでなんだか仲良くなれなそう感があったのですが、キュレーションが好みだったからか、受け入れやすいラインナップで興味深く、勝手に距離が縮まった感じです。この展覧会はオススメです。

 

春夏秋冬、私は美術館をぶらぶらしていますが、芸術の秋っていいますしね。
世の中まだまだ、不安定な中、こんな風に世界を眺めたり、切ったりできる人がいるんだなぁと浸りに行くと、今の現実も私も、誰かもいつかは料理できる、そんな日が来るのかなぁと思えます。少々ポジティブに。

8館巡れるので、また美術館レポート書きたいと思います〜。

*1:追記:ちなみに9月15日まで使用可能でディスカウント中です。15日を過ぎると自動的に使用できなくなります。

Wiener Fest Wochenに今年も行ってきた。

5月から延期されていたWiener Fest Wochen 2020がやっと開幕された8月の終わり。

まだまだ”通常”とは呼べない状況で、EU圏外からの公演などは中止されかなり規模を縮小しての開催でした。楽しみにしていたチェルフィッチュも中止。そんな中でも、劇場芸術、パフォーマンスを勉強している身としては、開催まで漕ぎ着けた様子を見届けようとチケット2枚をまずは購入。その後劇場で会った友人に進められてさらに1枚追加して、3公演を観劇してきました。批評文はドイツ語で奮闘中なので、ここではただの感想と言うか印象だけプレイバック。

 

とてもよかった。あぁ劇場に帰ってきた、そう思わせてくれたのが KerrsmaekerのDie Goldberg Variationen, BWV988

youtu.be

音楽の中で踊るのではなくて、音楽と踊る姿が、胸に迫るものがあります。丁寧に準備された世界を通じて、芸術というグラデーションの中で生きてきた彼女の呼吸に耳を澄ます時間がこの半年満ち足りることのなかったタンクを満たしてくれました。文字通り静寂の中で踊り始める、風見鶏のようにあちらへこちらへ身体を回す姿が忘れられません。今回の舞台芸術を担当したMinna Tiikkainenの構成もいい塩梅。最終日だったからか、関係ないかもしれないが、鳴り止まないカーテンコールが彼女に「この困難な時に」と言う挨拶すら引き出してしまいました。踊る人に言葉を発話させるだけのパワーがこの日の観客にはあって、コロナ対策で間引きされてしまった座席の分も、足で床を撃ち鳴らす音が響き渡っていました。

劇場から出て、友達と「あの瞬間が忘れられない」とカフェで話し込みました。

彼女が手を広げて回る時、その水平に伸びた影が暗闇の中で浮かぶ姿、シンクロする舞台に横たわる金棒の影、1幕と2幕のつなぎ方。舞台を担当したMinnaはライティングデザイナーなのですが、暗闇の中で黒と漆黒のコントラストを作り出してしまう手腕は見事でした。どこにどの黒を使ったのか、カフェでずいぶん話し込みました。

 

ダブルヘッターでその日はもう一つPilippe QuesneのFarm Fataleも観ました。

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夏の終わりの2週間。

8月も、あと数日で終わる。夏が過ぎるのは早いですね。

何度か下書きをしては、書いて、書き直してを繰り返したので、いつも以上に長いし、読みづらいと思います。暇で暇で仕方ない方、よろしければどうぞ…。備忘録です。

 

なんだかライトな素敵な話題を振りまきたいのですが、私はと言いますと 

先週からインターンが本格的に第二フェーズに入っていて、てんやわんやです。

 

昨年の夏から先週まで、細切れでリサーチ段階を手伝っていたオペラですが、あっという間に1年が過ぎ、リハーサルも目前です。それに先立って、この2週間は衣装に使う生地の発注を一通り済ませて、最初のフィッティッングが組まれていました。ウィーンの劇場はお金持ちです…目が飛び出そうな値段の生地でもイメージに合うものなら、どうぞ、どうぞと発注し放題…。こういうところでクオリティに多大な差が生まれるのだろうか…まぁレパートリー制だから、未来永劫長きにわたって使用されることを考えたら高くもないのかもしれませんが…。さすが「人類の遺産となり得るレパートリーを作ろう」なドイツ語圏。数百種類のサンプルとにらめっこしながら密かに、そなことを考えていました…。

 

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言葉にするとなくなってしまう。

今年は悲しいことばかり。これが最後だ、そう思いたいと毎回思うし、これが最後だと今も強く言い聞かせようと思う。そう思って祈ることと、現実から目を背けることが同意にならないか、それだけをいつも自問自答している。

 

自分の暮らす国で発言を制限されるということはどういうことだろうか。

ましてや、それが、どこに住んでいても、亡霊のように後をついてきて、ボーダーラインを超えた瞬間に突然肉体を呼び寄せて行使されるとは、どれだけの恐怖か。

 

昨年の夏、私たちのスタジオにはゲストが来ていた。我々の主任教授であるアーティストの彼女のドキュメンタリーを撮るために、カメラを回し続けていた若者たち。みな香港からはるばるやって来た。私たちの授業風景を収め、生徒たちのインタビューも撮りたがり、ニコニコとした笑顔を浮かべて話しかけられた。「アジア人は珍しいよね」と、私と差のない不慣れな英語で、そう近づいてきた。

 

ロックダウンに入った3月、香港から一本のドキュメンタリー映画が届いた。厳重にセキュリティを掛けられたそれは、私たちが個人的に自宅で密かに視聴するために届いた。香港民主化デモのプロテスタントとその激動の最中を記録したものだった。それを視聴しながら、自分がひどく無菌状態に逃げ込んでいるような気さえした。見るだけで体力を奪われる作品だった。それが安全かもわからない、でも私たちは昨年の夏から、教授が繋いだ細い糸を頼りに、その時はひどくのんびりと共同プロジェクトを企てていた。だから、ロックダウンが明けた頃、私たちは一本のビデオレターを彼らへ送った。

 

スイス人作家のMax Frischの幾つかの質問に、私たち一人一人が、一問一答形式で答えたものをつなぎ合わせた至極シンプルなものだ。何が安全なのか、その上で作品の形態を考えなければならなくなってしまった。でも何かお互いコミュニケーションの取れるものにしたかった。

 

ずいぶん日を跨いで、香港から返事が届いた。とても短いメッセージに、胸が張り裂けそうだ。

 

”I can't help but cry to see your young faces and the simple reflection of human condition, the true nature of university studies that my students here might not be able to enjoy anymore under the current situation.”

 

1年前、アトリエで、彼らとアジアの演劇について雑談した。とても軽い口調で、彼は私に「香港で劇場芸術を学べる場所はとても限られている上に、言ってしまえば保守的でもある。アートもそうかもしれないが」と話してくれた。それは、そこまで深刻そうでもなければ、むしろ私がなんでまたこんなところで、こんな勉強をしているのか聞き出すためのイントロダクションとも取れる様子だった。たった一年ですっかり変わってしまったのかもしれない。

 

私たちが香港とのプロジェクトをひっそりと、誰に知られることもないように、進めていることを知った母から長文のメールが届いた。香港国家安全維持法の国外での適用についての主な項目を抜粋したものだった。私がアクティビストではないことを知りながらも、アートの紙一重さに不安がよぎったのだと思う。

 

ことを進める前に、私たちは今、彼らの自由が人質になっている危うい綱渡りの端と端に立っていることをもう一度認識しなければならない。彼らをウィーンへ招待するつもりで始めたプロジェクトだが、何が最優先事項なのかがここまで複雑化するなど夢にも思わなかった。

 

私の叔父に香港人がいる。

幼い頃、丸顔、一重でガリガリのみすぼらしい私に、おじさんだけが「kikiちゃんは綺麗だね」といつも言ってくれた。誰かから綺麗だなんて言われたことなどない私は、いつもきょとんとした顔でそれを聞いていたけれど、話せる片言の日本語で、引っ込み思案だった私の背中を押そうとしてくれたのかもしれない。まだ返還前の香港の雑踏を手を引かれて歩き、ちょっと見た目の怖い金髪で青い目のお人形をプレゼントされ、初めて嗅いだその人工臭にひどく目が眩んだことを覚えている。活気のある、不思議な匂いのする街だった。

 

どうにかならないのだろうか。

どうして人が人を監視しなければならないのだろうか。フーコーの本を広げたって、私の欲しい答えはなかなか見つからないし、でもあのメッセージの先に、彼らがいるのであれば、ただ何かナイミツに、声を流せる水路を作れないものだろうか。

ここに書いてはいけないだろうか。でも黙殺するのが一番怖い。

ウィーンでルームメイトをキャスティングする。

今日はウィーンのルームシェア事情を個人的目線で少々。

ウィーンで学生をしていたら、一度は目にする単語”WG”

Google先生に聞いてみたらさっぱり回答してくれます。

検索結果

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WGとは:Wohngemeinschaft。 ルームシェアのこと。
WGとはシェアハウスのようなもので、Untermieter(又借り人)同士で住む場合やVermieter(家主)と住む場合などがあります。 VermieterがHauptmieter(家の所有者)から部屋を借りている場合がほとんどです。 

だそうです。 私が住むのもWGです。

コロナ騒動以前から、公営住宅が当たった(見つかった)ことを理由にルームメイトが9月に引っ越すことは決まっていました。コロナ騒動が落ち着いたので、来週から私たちは WGキャスティングなるものを行います。

 

部屋の条件、ルームメイトとしての希望条件などなどを細かく記載して公開でルームメイト、もとい部屋を探せる、そして見つけられる”WG-Gesucht”と言うサイトがあります。私も今の部屋はここで見つけました。

www.wg-gesucht.de

 

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