「夢を叶えてください」 30代、社会人が美大留学すること。

出国までのカウントダウンが始まりました。

書類の手配、役所の手続きとギリギリまでしなければならないことが多いですが

それ以上に、しばらく離れる友人との時間作りがメインになってきました。時差が8時間だと連絡を取り合うのも中々大変です。顔を見て話が出来るときは、出来るだけ会いたいなと思うので、3食それぞれ別の友人と過ごす休日が増えました。日本に帰るとこうやって幸せ太りするんですね。笑

 

今回は自分の中で忘れたくない事。自分の為に書こうと思います。

忙しい生活に飲み込まれる前に、残しておきたいなと思います。

 

 

 以前、30代、社会人で奨学金をぎりぎりの時期に用意するのは大変だ、というようなことをちらっと書きました。それは間違いなく、20代半ばで最近大学を卒業した人や現役の大学生に比べたら応募できる奨学金は少ないです。

 

私は奇跡的に奨学金の給付をしていただけることが決まりました。

4年間ではありませんが、一番学業を優先しなければいけない時期に、私にとっては十分な額を支給してくださいます。もう本当に奇跡、感謝を言葉で表せないほど。

 

30代以上、同じ状況で大変な方もいらっしゃると思うので本当は詳細に書きたいのですが、色々としたことがありますので、オブラートに包まざるおえないことを先にお詫びします。ですがリサーチした奨学金情報をまた別にシェアしたいと思います。調べるのに有する時間を考えると、少しでも足がかりになればな、と。

 

 

なぜ、こんなに奨学金の枠を制限しているのか?

理由は様々かもしれませんが、そもそも必要としている人も少ないのかもしれません。

OECD調査では25歳以上の大学進学率は北欧諸国で10%近く、日本は1%台という記事を読んだこともあります。社会に出て、また学びに行く人が少ないということのようです。背景には日本の大学や大学院の学費が高いことがかかわっているし、世間的な風潮もあると思います。

 

以前、韓国人の友人とカナダの真冬、雪が降りしきるバス停で将来の話をしたことを覚えています。彼は20代後半で、韓国では正社員として会社勤めをしていました。非常に忙しい仕事だったようで、残業の日々だったそうです。

「本当は別に夢もあったんだけど、夢より生活をとったんだよ」と。

「その夢を追いかけたいの?」と聞くと、

「韓国に住んでた頃はそんなことできるわけないと思ってた。でもカナダに来て、幸せそうな、ゆったりとした生活があることを知った今は、良く考えてみようと思う。考えることすら、忙しくてしていなかったことに気がついた。韓国では例えば一度大学に入って卒業して、就職したらその人生はもう変えられないような雰囲気がある。再進学や専攻を変えるというのはどこか失敗したと思われてしまうんだ。」

 

一個人の意見だけれど、私には彼の「夢ばかり見ていられなかった」という話がリアリティを持って自分に迫ってきました。同じような悩みを20代の頃は日本人の友人からも聞いていました。そして気がつけば、今はそんな話も聞きません。

 

30代には30代の悩みがあります。

未婚であれば結婚、子供が欲しければ焦りもあります。日本でのキャリアパスを考えると、ううかうか転職なんてしてられないかもしれません。

私にもそんな悩みが全くないわけではありません。ただ自分自身の人生を考えて、私個人に立ち戻るとそこまで支配されるような悩みでは無かったというだけです。

ですがそういう年代に、再進学することについては長い時間悩みました。

 

結局は、このまま死にたくない、どうしても叶えたいことがある、というシンプルな結論でヨーロッパの美大受験を決めました。

 

忘れたくないことというのは、奨学金の面接でのことです。

 

私は32歳、日本では大学を出ていません。ヨーロッパに留学生枠ではなく、正規で学部から院まで出る課程に入学するというのはよく言っても稀で、むしろ「今更、何をするのか?」と言われることが多いかもしれません、特に先に書いたように日本ではそう思われても仕方がないと思います。

 

面接は財団の理事の有識者の先生方が多くいらっしゃいました。

もちろん、年齢についての質問もありました。

 

ですが面接の最後にある方に目を見て言われました。

「どうぞ、夢を叶えてください」

「頑張って下さい」と。

 

幸せなことに友人や家族は、私のこれからを全面的に応援してくれています。

様々な試験や面接が続く私の話を聞いては「受かりますように~」と手を合わせてくれる温かい人ばかりです。何度救われた事か。

 

ですが、何度も言うように「勉強ばっかりして」と言われることもあります。

 

なので驚きました。こんな風に、私の人となりを知らない人から言われるとは想像したこともありませんでした。

 

本当に嬉しかったんです。

 

給付が決まり、財団の方より

「後進の発展の為にも、ご自身の道をどうぞ邁進してください。あなたをサポートできることを誇りに思います。」

というお言葉をいただきました。

 

私は私以外の多くの方の力で、前に進んでいます。

夢を叶えたいと思います。