純然たる眼差し。Museum Gugging。

アール・ブリュットってご存知ですか?

こちらとってもわかり易い、現代美術用語辞典のリンクを貼ってみます。

アウトサイダー・アート(アール・ブリュット) | 現代美術用語辞典ver.2.0


1945年、J・デュビュッフェは精神疾患患者など美術の正規教育を受けていない人々が他者を意識せずに創作した芸術をアール・ブリュット(仏)=「直接的・無垢・生硬な芸術」と呼んで高く評価した。アウトサイダー・アートはそれに対応する英米語として、72年、R・カーディナルによりつくられた言葉である。その際、「表現に対する衝動」を持つ制作者が「因習的な美術史の文脈化を拒み、管理されていない方法においてその衝動を具現化」した芸術を示すと整理され、その後の判断基準となった。(…中略)芸術的な訓練や影響を受ける環境になかった精神疾患(特に統合失調症)患者、知的障害者、交霊体験者、あるいは野宿生活者の作品から独創的なものが発見/再発見され評価されてきた。ー現代美術用語辞典より引用。

 

福祉事業的な捉え方をされていることが多々ありますが、またそういう側面もあるとは思いますが、私の認識では「芸術」であることが前提であり全て。その作家の背景から上記の分類に区別され、アウトサイダー・アートと呼ばれている、という考えです。作品の質は保障されている、当たり前ですが。

 

ここウィーン中心地からちょっと離れた場所にも、アウトサイダー・アートを中心とした美術館があります。

Museum Gugging

Webはドイツ語版しか見つけられない…でも英語があるような…

こちら Museum Gugging

2018年今日現在の情報ですと火曜から日曜日まで10.00 - 18.00が開館時間、月曜日は休館日のようです。住所はAm Campus 2 A-3400 Maria Gugging。

 

 

私は先日、スタジオメンバー、教授と講師の先生、合わせて数人でギャラリートークを申し込んで参加してきました。待ち合わせ場所はU4のHeiligenstadt駅。ここからバスに乗ります。ちなみにこのバス、ウィーン市内の年間定期では乗れませんのでお気をつけください!乗車時にチケットを買うことができます。

f:id:kiikiii:20180504050301j:plain

友達の後ろ姿つきですません。しかもバスの番号ちらついててすいません。この日乗ったのは239番、Museum Gugging 経由と書かれたバス。バスの乗車時間は約30分。

バス乗る前にみんながここぞとばかりに腹ごしらえ。30分は遠出に値するようです。私的に2時間以内は近郊なんですが、どうも縮尺にズレがあるようです。「Kikiも何か食べないと、お腹すいちゃうよ」と言われて笑っちゃいました。

 

そんなこんなでドナウ川を眺めながら、途中なんだか可愛らしい街を抜け、気づけば到着。大自然。小高い丘の上に美術館とギャラリーがあります。

f:id:kiikiii:20180504050900j:plain

 

丘を登って数分、到着です。

f:id:kiikiii:20180504051111j:plain

私、よく考えたらウィーンに住んでからちょっとした遠出が初めてです。毎日都会のど真ん中へ。やっぱり自然が好きです。ワクワクが顔に出ていたんでしょう。先生にも「もっと頻繁にこういう機会必要よね」と笑われました。

 

Guggingの在籍アーティストは、アトリエに通う人と生活をここで営んでいる人の2つに大きく分類されます。滞在制作をしている作家のほとんどが男性で女性が1名と偏りがあるため、現在は女性で滞在制作するアーティストも探しているそうです。2016年で10年を超える歴史を持ち、郊外とはいえ館内も広々としていました。

f:id:kiikiii:20180504052105j:plain

ギャラリートークは恒久展示エリアにて、美術館発足までの歴史から、各アーティストの作風や興味の対象など内容の濃いものでした。私たちが入り口で最初のイントロダクションを聞いていると、あるアーティストの男性が新作を持って通りかかり、私たちに披露したいと声をかけてくれました。ご自身で作品の解説をしてくれて、写真もどうぞ!と。こういう触れ合いがあると「他者を意識しない」のと「他者とコミュニケーションを取らない」というのは全く別物である、という当たり前のことを感じます。

 

作品も内的な、そういうものではなく、コスモスを持つ純然たる視野を啓示されているような感覚。強い筆使い、激しい表現でもエゴイズムを押し付けられない、変な例えですが地上から足が3cmくらい浮いてるような浮遊感がありました。はたまた星座を眺めるような壮大さ。印象的だったのが作家自身が展示方法に強いこだわりを持っていたり、作品自体に明確な解説が、場合によっては本人の声を反映してなされていたことです。私はアール・ブリュットについて概念的なものや代表的なアーティストの作品しか知らなかったので、滞在型制作だからこそギャラリストが知り得る背景を聞くことが出来、とても面白かったです。

f:id:kiikiii:20180504055539j:plain

Johann Garbersの作品群。

 

「どうやって作家を見つけるのか?」という質問にギャラリストが「アウトサイダー・アートのフェアなどにも行く」と答える時まで、私たちは完全にこれがそういう区別の芸術なんだと忘れていました。と言うよりその境を超えたことなど感じませんでした。それだけ、非常に完成された作品群だったのですが。そのイン/アウトと言う概念自体、倫理的に異論があり意見交換がなされています。ネガティブな区分けではないと思いますが、やはり線を引く意味が作品を前にすると曖昧になります。私たちも例外でなく「インとアウト、アール・ブリュットとモダン・アート、そう分類する必要性ってなんだろうね」そういう話をしました。

 

企画展もやっていましたが、断然恒久展示がオススメです!

ただ、腹を満たそうと思うほどに、ちょっと遠い居場所なので行かれる前にきちんと開館しているかなど調べられることをオススメします。私もまた季節が変わったら行きたいな〜と思っています。ちなみにこの前の記事、オイルサーディンの缶詰を開けたのもここのバス停です。大自然を前に生臭さもなんのその!