加点方式な日常に習うが慣れない。

私は欧米社会において、決定的に自分が馴染めないことが一つあります。

 

かれこれ20代半ばから海外と日本を行き来する生活(風)になり、自分が生粋の日本人ではもはやないという自覚があるですが、この点においては、「あ〜私って日本人」と妙な実感を得るものです。

 

今日もその場面に出くわし、口をパクパクさせてきました。

どんな場面か簡単に回想します。

 

本日、17時半。ライフドローイングのクラスの先生との個人面談にて。

※先にお断りしておくと、この先生は誰でも大抵褒めます。褒めて伸ばすタイプ。超繊細なものの言い方をするので、ゆえに、大抵褒められます。他の人の面談風景見たことないけど、断言できる。自慢じゃないけど、私のドローイングはへなちょこです。

 

先生「kiki、この絵は素晴らしじゃない!」

私「あ〜…(微笑む)」

先生「この線とか、この影とか、すごくいいわ。ちょっと手足のプロポーションがあれだけど、でもそれをひっくるめて〇〇シカジカ、いいじゃない〜」

私「ほ〜…(ちょっと大きめに微笑む)」

先生「何専攻だったっけ?どのペインティングクラス?オイルやってるの?」

私「ペインティングじゃないです〜」

先生「あら〜。でも次回はカラー持ってきて描くといいわ。このドローイングの影はペインティングだわ〜」

私「ヘェ〜…でもオイルなんて全然やったことないし、私の専門、芸術建築と劇場芸術、パフォーマンスで…ドローイングの短い時間で使いこなせるか…(尻つぼみ)」

先生「いやいや、この絵とかね!あなたはすごい短期間でぐんぐん伸びて先生驚いてるわ〜それで…」

 

さぁ、私のこの無反応具合どうでしょうか。笑

ここで欧米人(ドイツ人)なら、褒められたその言葉に乗っかってこう言います。

「Genau!」(訳:その通り〜!)

本当に、褒められれば褒められるほど、その言葉に乗っかり、いかに自分が考え、実践し、素晴らしいかをアピールします。初めて日本の方がその場面に出くわしたら、割と驚くと思います。自信満々やなぁって。

これは自信満々なのではなく(いや80%ぐらいはそうかもしれないけど)、褒め言葉が会話のフックなんだと思います。これは大学に限らず、同居ファミリーの日常にも垣間見られます。よくあるのは、朝食で娘が前夜に終わらせた宿題の作文的なものを読み上げて、両親が「素晴らしいわ〜!」と良かった箇所レビューを行う。そして娘のモチベーションもアップ!自信を持って宿題を提出できるってわけです。

そういう教育がスタンダードなのかもしれません。

 

要は、日常は加点方式なんです。

 

が、しかし未だに私はこの加点方式に慣れません。

ちなみに私の教授はこのフックを使用しないし、やたら目ったら褒めませんのでいいのです。素敵な人ですが、同時に感情を表に出さないのでミステリアスな人なのです。そのぐらいが私には丁度いいです。えへ。

 

話はそれましたが、他の教授陣や先生は(最終プレゼン以外は。笑)ぐんぐん褒めてきます。このドローイングの先生同様、ポジティブな気持ちで問題点を洗い出すためにそうしてるんだろうということは私も重々承知なのですが、恥ずかしすぎて、そのとおり〜って乗っかれないんです。まぁ、実感もないし。苦笑。

 

で、何が起こるかっていうと。

褒めても超反応が薄いので、先生に「えっあなたは気に入ってないの?」って聞かれて「いや〜え〜っと…まぁ完璧じゃないし…」とごにょごにょと、問題点を上げてしまいます。むしろ個人的には指摘してほしいし、違う視点を待っているのだよ。芸人の突っ込まれ待ちみたいなとこがあります。ボケてるわけじゃないんですけど、例えるならそんな感じです。でも全然オチがつかない。で、またポジティブマインドで褒め倒されて「あははっ」て薄ら笑いを浮かべる。エンドレス。

 

きっと彼らは「日本人って反応薄いのかしら」と首を傾げていることでしょう。

もしくは「kikiって基本ネガティブだわ」って思われてるかもしれない。

 

デンマークでもカナダでも同じ状況を繰り返してきたので、もう直らない気がします。

 

ただ、彼らを習って、ポジティブな感想はなんでも口に出そうという習慣は身についてきました。作品に限らず、日常生活の些細なことでも「素敵な服ね〜リップよく似合うよ〜いいプレゼンだった〜」。適当に褒めるのではなくて、いいなって思ってもわざわざ口に出さないことってありませんか?それをちゃんと口に出す感じです。確かにポジティブな感想を口に出していると、自分の気持ちも明るくなるので、そっちの立場は結構オススメです。何しろ加点していく。

 

そう、とてもポジティブで相手を思いやった素晴らしいコミニケーション方法だと思う。素晴らしい教育方針だと思います。

でもこれまでの学校教育を日本式減点法で受けてきた身としては、微笑むのが限界です。というか、家庭においても、私はそもそも両親からの評価が殆どない幼少期を過ごしました。何をしても減点も加点もされませんでした。好きなんでしょ?やれば?自分で決めなさい?と=(イコール)的教育を受けてきた。だからどこか、他人からの評価に無頓着なところがあります。

ん?ということは私だけでしょうか、こんな風に苦い笑しているの。

だとしたら。とほほ。