結局救急病院デビュー。手術もしてバタバタなウィーン編。

これはカルマ。ウィーン生活2年目も終わりが見えてきたこの時期にやってしまいました。というわけで、ウィーンで救急車に乗って手術したって話です。

 

デンマークでも、カナダでも救急病院にお世話になった経験のある私ですが、ここウィーンでは医者知らずで過ごしてきました。いつも3ヶ月も経たない頃に病院送りになっていたので、むしろ1年を過ぎたあたりで、ウィーンでは少なくとも救急にお世話になることは無さそうだなぁ〜♪なんて鼻歌まじりでした。カナダ編はこちら。

 

kiikiii.hatenablog.com

 

 

金曜日の19時。やっと授業が終わって、とてもいい天気だったので、授業終わりにアイス食べに行こう〜と誘われる。でも朝からの授業でランチもろくに取っていなかったので腹ペコ。アイスを断って、夜に劇場で会う約束をしてみんなは帰って行きました。

今思えば、アイスを食べに行けばよかったと心から後悔。

 

スーパーで買ったアボカドを手にアトリエのキッチンへ。なんだかその日ディスカッションが消化不良で確かにボ〜ッとしていました。手元を見てるんだか、なんだかって感じでアボカドを切っていたら、手を滑らせて、勢いよくアボカドを貫通してそのまま手の平にナイフが垂直にぐっさり。まさに漫画のように突き刺さってしまいました。衝撃の光景に一瞬時が止まった。慌てて、手からナイフを抜いたらアボカドから貫通して見える刃先は軽く2cmはあります。つまり少なくとも1.5cmほど深く手のひらに突き刺した様子。手の甲まで貫通してないか確認した。傷口から透明な血が溢れるは、直後から中指と人差し指が全体的に痺れて感覚がなくなるわ、でちょっと手を切ったレベルじゃない。えっやばい。と思っていたところへ友達が血だらけの私を発見。大慌てで救急車を呼んでしまいました。厳密に言うと、友達も意識もあるし、歩けるからこれから向かうという気持ちで連絡したのですが、いかんせん救急車の呼び出し番号にかけてしまったので、向こうもじゃあ来てくれともならずに出動します…と。

 

10分程で救急車到着。もう顔から火が出そう。確かに手は痺れて痛くて地団太踏む感じ。でも意識もあるし、歩けるから自分で病院まで行けると言ったのですが、縦に垂直に1センチ以上突き刺した上に出血も多いので歩いて気でも失ったらどうするんだと言われて大人しく救急車に乗りました。

恥ずかしかった。しゃべれるし、歩けるし。迷惑極まりないと恐縮していたところ、救急隊員のお兄さんたちは優しくて、お友達の判断は間違ってないよ。相当深く入ってるから、ショック状態に急になったりしたらいけないからね。と言ってくれました。とはいえ、救急車は必要なかったと思う…心から反省。

 

ちなみに保険に未加入で救急車に乗ってしまった場合、750から900ユーロくらい請求がくるそうです。そして出動だけで、何もなかった場合(つまりはイタズラなんかだと)も保険加入に関係なく費用を請求されるそうです。当たり前ですが、緊急時のためのものですから…でも緊急かどうかなんて素人には判断が難しいときもあるので、大げさに、私のように呼んでしまうケースもあるんだと思われ…。兎にも角にも救急車の車内で個人情報の確認や保険証を提出して、AKHに到着。

 

すぐに女医さんが様子を見に来てくれたけれど、意識もあるので、とりあえず順番は後回し。ベットを勧められたけれど、もう恥ずかしいやら情けないやらで「座って待てます」と盛大にアピール。じゃあ、と治療室の目の前の椅子に座らされました。「急に容態が急変したらすぐ気がつけるようにここから動かないで」と釘を刺されて。

 

救急車を呼んでくれた友達も一緒に行くと言ってくれたのですが、意識のある私は相当待つことになるとわかっていたので丁重に断って一人で、治療室の目の前の椅子で2時間ほど待ちました。

 

待合室から呼ばれてからが嵐のようでした。

あれから2時間以上経つのに未だに手に感覚が戻らないの?どんだけ深く入ったのか、なんか神経切ったんじゃないか医者と看護師に取り囲まれ、あれよあれよと「とりあえず細菌が入らないように注射打つから」「過去にどんな注射や薬を投与したか教えて」と詰め寄られる。え〜たったしかインフルエンザの注射が最後だけど…と終始オロオロ。そして、オッケーっと腕にバシッと打たれる。え〜う〜って言っているうちに処置室に運ばれて、「手のひら開けて神経切ってないか確認するから」と説明を受けて、じゃんじゃん消毒されて、局部麻酔を打たれて、医者が3人来てご開帳。

 

いくら麻酔を打ったとはいえ、電メス使って、神経じゃんじゃんいじってくるし、手全体が麻酔下じゃないから、ちょっと外れると頭割れそうなくらい痛い。死にそう。ベテラン看護師っぽいマダムが空いてる手にボール握りしめさせてくれたけど(出産かよ)、そんなんじゃどうにもならずに静かに横になれない。手をご開帳して電メスギンギンやってる先生✖️3にも「マジごめんね〜痛いよね〜」と気休めの言葉をかけらるも、歯医者で痛かったら手あげてくださいシステムと同様で、治療の手は止まらない。当たり前。

 

そこへイケメン看護師登場。私の手を握り、大丈夫だよ〜とイケメン魔法を試みる。「どこから来たんでちゅか〜?ドイツ語上手でちゅね〜?何勉強してるんでちゅか〜?」とアボカドでこんなことになった謎のアジア人アラフォーを励ましてくれる。これが意外と効く。イケメンじゃなくても効くであろうが。出産の立会いって効くんだろうな、とまたトンデモナイ妄想を繰り広げながらも医者3人が格闘すること1時間。やっと「さぁこれが最後だよ〜」と声をかけられて「あ〜神様ありがとう〜」とドイツ語でつぶやいた私の一言で処置室は爆笑に包まれました。私クリスチャンじゃないけど、ここウィーンだから。

 

その後、一番若手が鼻歌まじりに(例えではなく本当に鼻歌歌ってた)縫合する中、執刀医っぽいベテランの先生2人に説明を受ける。

何を繋いで、どうしたのか、何の説明だったか全然頭に入ってこなかったけれど、とりあえずは爽やかな笑顔で「大事な神経は何も切ってなかったよ。ラッキーだったね」と親指立てて言われたのだけは覚えています。そして最初のベテラン看護師さんが電子カルテに情報は残るし、紹介状も出るからそれ持ってホームドクターに月曜に行くのよと教えてもらいました。プライベートは高いからね、ちゃんと調べるのよ、とこれまた優しい。ウィーンの医療関係者、本当に優しい。

 

そんなわけで、紙を受け取り、帰りは自力で地下鉄にて帰宅。

もちろん、夜の劇場公演には間に合わなかったわけで。姿を見せない私を心配するみんなに、救急車を呼んだ友達が出来事を話したようで、携帯の電源を入れるとじゃんじゃか心配のメッセージが。まさか手術まで受けてたなんて誰も思わないので、さらに、なんだって〜?!と大ごとに。ドイツ語が全くしゃべれず、ウィーンのことを何も知らない頃から私の面倒を見ている彼らにとって、私は永遠にヒヨコなのです。笑

 

明日はホームドクターに行かなければいけないのですが、ホームドクターが決まっていない私に同居の家族や友達が色々紹介してくれました。病院でもらった紙やら、何やらも友達がチェックしてくれてお子ちゃまっぷりを発揮していますが、自分の身の程を弁えて、ホームドクターにちゃんと説明するためにドイツ語のカンペを作って行きたいと思います。

 

一大事には至らなかったので、笑い話として。救急隊員さんから看護師さん、お医者さんに至るまでず〜っと「アボカドの〜」と呼ばれ続けたわたし。もう最後には誰かが「アボカドで運ばれた〜」と言った言葉に笑ってしまいました。看護師さんも一緒に「あなたは今日、ここではアボカドよ」とのってくる。手術までしないにしても、アボカドで手を切って救急に来る人は多いとも言っていました。

 

とはいえ、みなさん。アボカド調理には気をつけてください。

そして当たり前ですが、保険にはちゃんと入りましょう。うん。

 

そんなわけで、まだ指は痺れたままで、傷口もゴリゴリに痛いのですが、ひとまずは動くので抜糸後に徐々に痺れも治まることを祈るのみです。

明日のお医者さんもいい人だといいな…。