フィルター越しの世界。

mumokに続いて今週は2館お邪魔してきました。もうBundesMussenCardの19ユーロの元は取りました。やっぱり破格のディスカウントだったことは言うまでもない。 

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 ウィーンに住んで早3年、一度も行ったことがない美術館が2つありました。

一つは、かの有名なアルベルティーナ。

www.albertina.at

日本語のページが存在します。つまりは観光名所として鉄板なのだと思います。なんせ日本人の好きな印象派の作品も多いですしね。アルベルティーナの下にあるフィルムミュージアムには映画を見に行ったり、お隣の公園で日光浴がてらぼーっとしたりすることはあっても、アルベルティーナの階段前が旅行者で混雑している景色を目の当たりにすると「激混みの美術館…」といつも腰が引けて、後回しにしていました。実際どのくらい混雑するものなのか、今は想像できないほど、私が行った時はガラガラでした。

 

そう、ガラガラなのです。どこもかしこも。

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誰もいません。館内もガラガラです。なんだかオーストリアなゴージャスなお部屋も見て周れるのですが(興味がなくてインフォメーションを全く読みませんでした)、こんな写真が簡単に撮れちゃうぐらいガラガラです。

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このオーストリアな感じを突きつけられると、なんでわたしウィーンに居るんだろう?と言う気持ちになるくらいには、このテイストが響くことはないのですが…フランスの煌びやかさとも全然違うし、このザオーストリアテイスト…つっ伝われ!

 

特にお目当があったわけではないのですが、びっくりしたのがVincent van Gogh: Der Sämann, 1888。本やデジタルで見るのと想像以上にぜっんぜん違う!この白をフレッシュに再現できない以上、もはや別物。とても素敵でした。例えるなら、こんな感じ。

 

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そうなんです、昨日はウィーン自然史博物館にも行きました。こちらが3館目、そして行ったことのなかった博物館のもう一つだったのですが、そこで見た鉱物コレクションが面白かった。そしてこの白!このフレッシュな白と黄色のコントラストが、ゴッホの絵みたい〜と一人で興奮。カラーサンプルとして写真に収めてきました。ゴッホの絵は彼の手により生まれた人工物ですが、彼がそれを天然性と芸術性の融合体として産んだのではなかろうかという気さえした、くらいにお見事でした。特にゴッホの大ファンというわけではありません。でもアルベルティーナで見た絵画たちはちゃんと息遣いが聞こえて、これはどうにも印刷では表現できないのよな…としみじみと実感しました。

 

アルベルティーナのコレクションは非常に軽やかなラインナップで、それも意外でした。こんなに巨匠クラスの作品が並んでいて、この軽やかさは一体…普段美術館に行かない人でもさらっと見れると思います。クセのない美術館です。私はテートモダンとかの方が好みです。ゴリゴリ。

 

さてそんなわけで、この流れでウィーン自然史博物館のお写真。珍しくお写真ちゃんと残しました。ガラガラだったもんで。館内の構造は、向かいの美術史美術館と同じ感じです。この正面の階段を上がるとハンス・カノンのDer Kreislauf des Lebensがお目見え。

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微生物から寄生虫、昆虫に爬虫類、両生類、鳥類に哺乳類、恐竜に…と所狭しと膨大な量のコレクションが展示されています。

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なんだか最初からぞわぞわして、終始ぞわぞわして、早歩きで鉱物以外のセクションを素通りしてしまいました。最初は「これが現実だ。目を向けなさい」と自分に言い聞かせてみるものの、途中で「いやいや、もう死体博物館…」という気持ちが勝って怖くなってしまいました。動物は大好きだし、ナショナルジオグラフィックとか小さい頃好きでよく見ていましたし、今でも百科事典とかで虫も寄生虫も凝視できるのに、ここは難関。動物園も動物が好きゆえに、あまり好んで行かないのですが、それでも生きている動植物を観察することはできても、剥製やホルマリン漬けが苦手なんだということが判明しました。鉱物セクションに居座って、リフレッシュして帰ってきました。石ってすごい…。

 

なんだか帰り道に、自分がフィルター越しの世界に安住してるんだなぁという感想を持ちました。芸術ってそもそも、知識の制度化に逆らって刷新、編纂、再読解みたいなところがあるので、気がつかないうちにそういう風に世界を眺める癖が付いていて、ダイレクトな表現への免疫が低下しているのかもしれません。ゴッホの絵にしたって、mumokでみた作品にしたって、どれもこれも、知識としてしか頭に入っていなくて、フィルターの外側の本物を目の前にして初めて、ちゃんと自分の人生に存在したものになるんだなぁとも思いました。

 

安くてお手頃〜という気持ちだけでゲットしたBundesmussenCardでしたが、自分が普段選ばない場所に行ってみるいい機会になりました。まだあと2日あるので、空いた時間に他も立ち寄ってみようかなと思います。コロナで色々なものを失調中ではあるものの、こうやって様子を伺いつつも、普段はしないことをしてみるのもいいもんだ、くらいに言い聞かせて楽しみを見つけたいものです。