卒業しました。

いやぁ。

 

なんだかまだ実感がないのですが、卒業した翌日から色々な先生から仕事の紹介メールを貰い続けて一週間、ちょっと認識してきました。卒業したようです。

 

というわけで、まだ片付けがだいぶ残っていますが、18日に卒業作品のコミッションを経て、Diplomをやり終えました。Diplom、Magってドイツ語圏独特のタイトルで、はっ?ですよね。個人的な認識としてはBAとMAのあいだくらい。まぁでも正式にはMA終了相当でして、次のステップはPhdとなります。博士。そんな枠組みの話なんてどうてもいいのですが。

 

私は大学の外に場所を借りていたので、そこでパフォーマティブな空間作品を発表しました。コミッションの批評にはとても満足しています。大学の教授が変わったことで、チームが総入れ替えに近い形で変わり、その結果、大学内の教授陣にしたって、私のことは個人的にはよく知らない、そして外部からのゲストのコミッショナーも、もちろんわたしのことは知らない。それがとてもよかった。彼らはただフラットに作品についてのみ議論してくれて、質問を受けました。学生相手でさらによく知った仲だと、努力みたいなものを評価したいという教育的やさしさを持ち寄られることがあるのですが、個人的には努力は自分だけが評価し、反省し、受け流すものなので、それは批評の場には要らないと思っています。わたしが、わたしの満足いくまで頑張ったことが努力として自分の中に残れば、それで十分です。誰かによく頑張ったと言われるよりも、シンプルに作品だけを評価されたいです。

 

それと対照的に、コミッション当日に、わたしがこの4年お世話になった前教授から温かいメッセージを受け取りました。彼女との関係はもう、教授と学生ではないので、なんだかとても素直にすべてを受け止められました。とてもいい成績と、想像以上の批評をいただきそれをそのまま返信しました。とても喜んでくれて、そして落ち着いたら電話でお話ししましょう、今日はお祝いを楽しんでと言ってくれました。

 

感情の処理に煮詰まった作品ではありましたが、1時間以上滞在してくれる人が多くて、エモーショナルな感想がたくさん届いて驚きました。

コミッションで、ある批評家の先生から「あなたは答える必要はないけれど…という前置きで作品が包括する神秘性が、ともすれば鑑賞者、観客にはとても不明瞭であるにもかかわらず、逆説的に非常に観客に開かれた自由度の高い作品で、この不明瞭さはあなたの希望なのかもしれないとすら思った。私たちはあなたの膨大なバックグラウンドの理論と哲学を読んでから作品の中へ入ったけれど、それでもなお、聞きたいことが多くある」と、言われて面白かったです。おそらくは、ビジュアルと空間芸術が自分の言語であるという強い認識があるので、理解よりも経験を優先して作っているからだと思います。もちろんすべて言葉で説明できるし、もっと明瞭にものを配置することもできるけれど、理解してほしいという希望でそれを決定することはありません。むしろわからないけど、知りたいという感情を体験してもらって、その先に言葉の説明や理論があればいいのではないかと思って制作していました。そして、そういう専門的な理論や哲学を必要としない観客が多くいることを信じていました。それぞれが、それぞれでなにかを見て、流れる音をつかんで、空間に佇めること。それが今回見つけた感情の処理方法でした。

 

実際、コミッション以外の観客からはエモーショナルな感想が多かったことを思うと、それなりに何かが伝わったのだとすこし安心しています。

 

お花をたくさんもらいました。イタリア式に冠まで用意してくれていた友人たちに笑顔が止まりませんでした。フレッシュなリーフの匂いがうれしくて、バスルームに吊るすと長持ちすると教えて貰い、今もかけています。今もまだいい香りです。長くてきついハグをたくさんの先生からもらいました。私の顔を眺めて泣いていた人たちをみて、心からなんだか一つ終わったのだと思いました。

 

あれから一週間、まだ作品の発表を延期した子を手伝いに時々アトリエに行っては少しずつ荷物をリュックに詰めて自宅に持ち帰っています。3月までこんな感じかもしれません。

 

これからのことはわからないけれど、まだ卒業して一週間なのに、色々仕事の紹介をいただいて、少しゆっくり考えなければいけないのだと思い始めました。日本に帰るのかな。なんだかそれが今は一番想像できないです。でもスイスやドイツの仕事の紹介のメールを読んでいて、うーん、新しい国というのも今は少し遠くて。でもどこでも、目の間にある景色だけが現実だからな。たいして変わらないかもしれないけれど。

 

そんなわけで、2017年秋から挑んだ30代の大学生活は一旦幕を閉じました。

おつかれさま、わたし。ありがとう、みなさま。

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