バーンアウトして病気療養中。

とんでもない忙殺により、その言葉通り自己犠牲を払ってしまったようで

プロジェクトの幕が上がったのを見届けて、医者に病気休暇を言い渡されました。

 

たぶん4月くらいから、徐々に始まっていて、そのまま
今シーズンで一番大きいプロジェクトに突入。担当アーティストが超エゴイスト。結果、仕事をやり遂げる2週間くらい前から感情を置き去りにした涙が流れるようになりました。悲しいとか辛いとかの前に涙が、それも嗚咽するように出てきてそれはもう見苦しいやら恥ずかしいやらで、急に泣く自分に自分が相当参っていました。人間ってこんな簡単に痩せるんだなと後半ははけるボトムが無くなってこれもまた、困りました。

 

とにかく幕が上がったので、この意味不明の号泣癖を何とかしたいと思い医者に行ったところ、「今すぐドクターストップが出たとメールだけ書いて、仕事用スマホの電源を切って直帰すること。何も考えてはいけない」と言い渡されました。過度のストレスと労働で脳がバグっちゃったみたいです。

 

家に追い返された日にちょうどルームメイトがベルリンから帰ってきていて、彼女にも6週間は問題なく休めるから、医者の指示に従おうと促されました。こうなる気がしたとも言われました。

 

正直、日本で働いていた時も労働時間があってないような業界に居たし、ウィーンでの大学生活も日々制作と課題に追われて稼働時間は長かった。それなのに、今回はなんでどうした?と自分が一番驚いています。

 

でも家で静かに一人で過ごすようになって、時間が出来て、少し活動力が戻ってきて、ある本を読みました。

k-hirano.com人とかかわる時に「その人用の自分」を分人と呼び、私たちは色々な人との関係の数だけ分人を持ってて、つまり私はその複数の分人の集合体であるという話を平野さんはされています。本当の自分はひとつじゃない。そういう話。

 

この本を読んで、私はドイツで仕事をする時に求められることに答えようとする分人Kikiが好きになれないのだと思いました。病院の先生には、ドイツでは小指を差し出せば、握った手ごと無理やり引き寄せて全部寄こせ!というような要求を仕事でされることがある。そういう時は小指と薬指くらいは渡してあげてもいいけれど、それ以外はダメ、無理、嫌だとはっきり言わなければいけないということわざがあると言っていました。そしてそれは相手が納得して引き下がるまでなども言わなければいけないと。

 

私も自己主張がはっきり出来るタイプだと思っていたのですが、エゴの塊のぶつかり合いみたいなアートの現場では、私の主張は弱弱しくて誰にも届かないみたいです。それでも自分の中の戦闘モードのリミットというのがあって、「もっと強く、はっきりと、何度でも拒絶せよ、戦え」という要求に答えた分人Kikiが私は受け入れられません。

 

ルームメイトにも周りの仕事をする仲間にも、どれだけ強く意見を言おうが、こっちの人は気にしない。自分を守ることが一番大事だと言われ続けています。あなたのような優しい人は使われるだけだ、それではここでは生きていけないと。

 

そうなんだと思います。

でも、ぎゃあぎゃあ言う自分が好きにはなれません。もちろん冷静に丁寧に自分のテリトリーを守る手段はあると思います。ただ、そもそもそういう気質ではないので…好きではない自分を他人にさらけ出すのは苦痛でしかありません。言葉の壁もあると思います。もっと上手な言い回しが出来れば、色々なことをスマートに回避できるのだと思います。でも、私にも限界というのがあって、この先どれだけドイツ語を勉強したところでネイティブのさらに語彙力の高い人を言い負かせるようにはならないでしょうし、何より、そこまでしてドイツで何がしたいのか?あと何年?そんな言い訳が頭を駆け巡ります。

 

今もまだ考えがまとまらなくて、どうしたいのかわかりません。

 

 

それでもこうやって文章を書いて整理しようと思えるところまで回復してきたので、かなり初期に医者に掛かって良かったなとは思います。

 

ドイツでは病気休暇の届はニュートラルで、どんな病気で休むのかを説明する義務はありません。ですが、私の忙殺具合を多くの人が目撃していたので、自然とバーンアウト的な何かだとみんなが悟っているようで、そんな感じのメッセージがちょこちょこ届いています。しばらくプライベートのスマホもミュートにしていたのですが、今日やっと返事を返せるところまできました。

 

人に恵まれていて、なんとかやっています。

 

職場の人に冗談で「世界中のアーティストがKikiだったらいいのにね。勤勉で礼儀正しく自立して仕事するんだから」と言われましたが、私もエゴ度100000パーセントのアーティストに問いたい、そんなモラルとか社会問題取り扱うなら、自分のモラル感先に見直しておくれよ…と。ここまで「ドイツは」と書いてきたけれど、世界中どこでも、アーティスト相手の仕事だと抱える葛藤だというのはわかっています。

 

ただ、その度に壊れるわけにはいかないので。

なんていうか、考えないと、ですね。

 

病院の先生に診断の最後に言われた、でも人の気質というのは変えられないのよ。別の仕事をすることも考えてねという言葉が今日は頭から離れなさそうです。