ロストイントランスレーション。

今日はコロナと関係ないことを。

 

実は進行形でドイツ人の友達が京都に交換留学中。残念ながら大学は5月からオンライン授業(日本語)のみ開始されるようで、日本語がさっぱりな彼は6月には帰国の予定である。留学前から実践的な授業だけ参加するつもりでいたので、全部講義になってしまってはお手上げだ。そんな状況なので日本人の友人は一人も出来ずに一人で散歩をしたり、映像を撮ったりして時間を潰しているようである。そして時たま私に翻訳して!と写真が送られてくる。それが結構面白いので、ちょっとご紹介したい。

 

ある日送られてきたのは指名手配の張り紙。

「kiki、この顔写真は何?300円って何?すごいいっぱい見るんだけど」

 

言われてみれば、指名手配の張り紙ってヨーロッパで見ないかも…。

それは指名手配犯の顔写真で警察が情報を呼びかけていて、懸賞金がかかっている事件もあるんだよ、300円じゃなくて300万円だよと翻訳。みかけたら警察に電話してね!と。

 

それから数日後、今度は空き地に「売地」という看板が立った写真が送られてきた。そういえば、これもヨーロッパでは見かけない。カナダでは顔写真付きで不動産の看板がいたるところに立っていたのに比べれば、特にウィーンでは見かけない。というわけで、興味があったらその土地買えるよと翻訳。

 

ある日の電話。昨日スーパーに行ってみたんだけど、信じられないくらいの数の不思議なソースが売っていて何も買えなかった。せっかく日本にいるから日本食に挑戦してみたい。日本食で使う調味料を教えて欲しい!そして昔kikiが作ってくれたパンケーキのソースの名前が知りたい!という内容。

どうもスーパーでお好み焼きのソースを探したけれど、たどり着けなかった模様。店員さんに英語で「卵とベーコンのパンケーキにかける黒いソースはどれですか?」と聞いたらしい。ウィーンでは薄切りの豚肉が手に入らないので、私はペーコンを代用して昔友達にお好み焼きを振る舞ったことがあるのだ。その説明ではたどり着けない。笑

 

みりんや、お好み焼きソース、出汁、酒というものを覚えてスーパー再挑戦。今度はお好み焼きにたどり着けました。

 

つい最近は炊飯器を買ったという連絡とともに、わからないボタンがあるという連絡が。写真を見てみると「時」「予約」「分」のところにはてなマークがついていた。言われて初めて、確かに!こちらの炊飯器には炊飯と保温ボタンしかない。予約機能が付いているのは日本製か韓国製ぐらいかもしれない。そもそもご飯を朝から食べる習慣がないので、炊飯予約など必要ない。朝早くからおにぎりをこしらえるお母さんもいない。夕方に仕事が終わってのんびりご飯が食べれる人も多いので、帰宅に合わせる必要もない。というわけで炊飯予約文化について翻訳。「超便利だね!」と大喜びだけれど「僕は使わないけど」と。炊飯器を購入した理由は宇宙船みたいで面白かったそうだ。ついでに白物家電についても翻訳。笑っていた。

 

本日の最新版は、お店の張り紙。「本日休業。24日はカフェは営業します」と書かれていた。映画館に貼ってあったそうだ。閉まるということは理解できたようだが、その先がミステリー。確かに英語やドイツ語なら、この場合はonly Cafeとかnur Cafeとか、つまり24日はカフェ(だけ)は営業しますとなるはずなのだ。というわけで日本語ミステリーについて翻訳。

 

せっかく1年悩んで、挑んだ日本留学。とても残念な形で終わってしまうかもしれないが、それでもヨーロッパを出てみたいという希望は少し叶えられていたらいいなと思う。留学の選考に出すモチベーションレターの添削(日本人に理解してもらえるかinドイツ語)をした身としては、彼の熱い気持ちを読んでいたので悲しい。でも今の日本の状況を考えると、言語弱者の彼にあまり長居もお勧めできない。

 

留学やワーホリは事前に計画して準備をしていた人が多いと思うので、今回のことでそれがおじゃんになってしまった人が沢山いるだろうと思う。仕事を辞めて一大決心したギリホリの人なんかたまったもんじゃないだろう。大学生だって休学して行く予定だった人は、就活との板挟みで、在学中に次の機会はないかもしれない。ただ人生は予測不可能なものなので、またチャンスがあれば行きたいと思っていればめぐりめぐって縁があるかもしれない。ということは私が身をもってお伝えできる唯一の言葉である。

 

また近々新しい写真が送られてくるのを、密かに楽しみにしてる。というお話。